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紋章憑き~第五章【喰人】~

  第五章【喰人】

 時刻は夜の食事も終えた七時過ぎ。
 限られた者達だけが歩くことを許された廊下に、軽やかに走る足の音が響く。食後の全力走、横っ腹が痛くなり始めた頃に目的の部屋に到着した。扉を豪快に開く。
「遅れてしまい申し訳ありません!」
 慌てた様子で円卓の置かれた部屋に入ってきた人物は、国を支配するにはあまりにも可愛すぎる王国の女王リリスだった。
 日が暮れ、明かりの灯された部屋には既にアルベセウス、ガイナ、ナスターシャというお決まりの面々がいつもの席に座り、そのナスターシャの席から少し横に離れた席に、仏頂面をした隼人が円卓に肘を付いて座っていた。いや、よく見ると隼人だけではなく、ナスターシャの顔もどこか覇気が無いようにも見える。
 リリスが謝るも、ガイナとアルベセウスが笑って問題ないと返す。リリスも笑顔で返すが、あれ? と思った。
 いつもなら先の二人よりも、ナスターシャが一番に何かしら声を掛けてくれるのに、それがない。リリスは自分の席に着くなり、初めてお目に掛かる『竜の紋章憑き』である隼人よりもナスターシャの様子がいつもと違うことが気になった。アルベセウスから前もって聞かされていたのは、とても喜ばしいことだった筈。それなのに、どうして?
「あの……ナスターシャ? どうしたの? どこかお体の具合がよろしくないの?」
 当然、それはそれは心お優しいリリスはナスターシャのことが心配で心配で声を掛ける。
「あ、いえ、大丈夫です」
 笑って返すが、やはりその笑顔は引きつる。
 当然、それはそれは心お優しいリリスがそんな小さな反応の違いを見過ごすわけもなく、尚も食い下がる。
「そのような顔で大丈夫と言われて、はい分かりましたと言えると思う? お願いナスターシャ、本当にどうしたのか教えて? 私あなたの力になりたいから」
 あぁ……姫様は何とお優しいことか。そのお心遣いがとてもとても嬉しく思う反面に『やめて』とナスターシャを苦しめる。隼人は肘を付いたまま黙ってその様子を眺めてた。
 ナスターシャの気が滅入ってる理由。それは侍女達への『公然卑猥口吻口外禁止』の根回しが間に合わなかったからであった。釘を刺しに行った時にはもう既に、騒動に興味津々な隊の女性達が湯殿から出てきた侍女達を囲むように群がり、根掘り葉掘り聞かれた後だった。救いは、隊の女性達は男性との接触が極端に少ないおかげで、事の広まりは隊の女性達までに抑えられているということか。今は。
「いえ、本当に大丈夫ですから。心配なさらなくとも大丈夫、姫様がわざわざ心配するようなことでもないのです」
 今度は同じ失敗を繰り返さぬように頑張って笑顔を作った。
「まあ! 私にナスターシャの心配はするなと言うの? 私に、困ってる人を平気で黙って見過ごす人間にでも育って欲しいの? そ、それともナスターシャは私なんかに心配されるのは迷惑? 鬱陶しい? ウザい? ……そう、ウザい……ウザいのね。私はウザいのね」
「!」傍観していたがこれにはビックリするアルベセウス。
「!」同じくビックリするガイナ。
 隼人だけは一瞬何事と瞳をキョロッと動かしてガイナとアルベセウスを見るも、普通に傍観を続けていた。
「ち、違います! 私がいつその様なことを言いましたか! て言うか、姫様! 『ウザい』などと低俗なお言葉どこでお覚えになったんですか? 姫様がそのようなお言葉をお使いになってはいけません!」
 思いも寄らぬ即席説教を聞かされたリリスはガイナを見た。それだけで十分だった。リリスに余計すぎる言葉遣いを学習させた諸悪の根源は、何たることかすぐそこ身内にあったようだ。アルベセウスとナスターシャはさして驚くような素振りも見せず、逆に、やはりと思う気持ちの方が大きかった。
 三人の視線を一斉に浴び、なになに? 一体何なんだよ? とガイナは自分を指差した。
「へっ? なに、お、オレ?」
 リリスはコクンと可愛く頷く。
「ガイナはいつもイヤなことや面倒なことがあると決まって『うぜぇ』とか、『ウザいんだよ』と口にしてましたから、てっきり私は……」
「い、いや姫様、ちょっと待ちなさい待ちなさい。そ、それはだな――」
 ガイナが続けようとした言葉をナスターシャは手を差し出して制する。それが意味するのは、『私が説明する』だ。人に対して説くことが得意でないガイナは黙って従った。
 説明始める前に、ナスターシャはコホンと咳払いする。
「――いいですか、姫様。それはガイナだから許される言葉遣いなのです。低俗の塊である、ガイナ! であるから許されるんですよ? 間違ってでも王族である姫様が使ってもいい言葉ではないのです。今回、姫様が間違って使ってしまったことについては……身近に、素養のよろしくないガイナがいると分かっておきながら放置していた私達にも落ち度があります故に、見逃します。が、二度目は許しませんので肝に銘じておきますように。分かりましたか? 姫様」
 リリスはシュンと落ち込んだ様子で、ナスターシャの説明に頷いた。
「……おい」
 そこまで言うか。珍しく本気で凹んだ様子のガイナであった。隼人はそんなガイナを横目で見ながらナスターシャを見ていた。凛とした表情で説明するナスターシャを見ていた隼人は顎に手を添え、これまでにない程真剣な表情で考え事をしていた。
 縁の細い眼鏡を掛けて、赤いスーツに着替えてハイヒールを履かせると……女教師……か。女教師物……か。
 タイトルは……『新人巨乳女教師ナスターシャ・セレンディーテ~先生の体エロくて堪りません! 授業に集中できません! 股間のチャック封鎖できません!』で、どうかな。
 ……うん、良いな。悪くないな。因みに最後の『股間のチャック封鎖できません!』のところは織○裕二風にするように。ここ重要だから。
 ……どうでもどうでもどうでもいいことを真剣に考えていた。
「……で。それでナスターシャの抱えてる心配事ってなんなの?」
 これではぐらかすことが出来たかとナスターシャは思ったのだが、なかなかどうして諦めの悪いリリスは尚も食い下がるのをやめなかった。
「い、いや……だからそれはですね……ぅぅう……ううぅ……わ、分かりました教えます」
「本当ですか!」聞いた途端にリリスはぱぁっと明るい表情になる。
「た、ただし、今はダメです。ガイナとアルベセウスが聞いていますので、また日を改めて姫様以外に人がいないときにでも相談させていただきます。それでいいですか?」
 ナスターシャの出した条件に納得し喜ぶリリスと対照的に、聞けず仕舞いのガイナとアルベセウスは顔には出さなかったが心の中で残念がった。
「――さて、少し話が逸れたが、そろそろ話を進めようか。時間も時間だ、明日の姫様の仕事に支障をきたすことのないよう、出来るだけ議論にならないようにお願いする」
 興味があまり湧かない隼人は置いておいて。ガイナとナスターシャが黙ることで、アルベセウスはそれを了承ととり話を進める。
「まずは……キミだ」
 アルベセウスは真っ直ぐに隼人を見た。円卓に肘を付いたままの隼人は動じることもなくその視線を受け止めた。が、隼人のその態度にガイナが早速噛みついた。
「おい。さっきから姫様を前にしてるってのに、てめぇのその舐めた態度は何だ? 肘、下ろせ」
 明らかにいつもと違う、威圧感を纏った雰囲気にリリスは身を震わせた。
「ガイナ。姫様の前だ」
 アルベセウスが言う。ガイナは舌打つ。ナスターシャは先が思いやられると言わんばかりに首を左右に振ると嘆息を漏らす。またアルベセウスが口を開く。
「悪いが、私もガイナと同じ気持ちだ。王を前にしてのキミのその態度は褒められたものではないな。出来ることなら、その掛けた肘を下ろしてもらえないか」
 穏やかな物腰で言うアルベセウスだが、言葉の一つ一つには得も知れぬ圧力が紛れる。
 少しの間をおいて隼人が口を開いた。
「もし、オレが出来ないって言ったら?」
「なに、問題ない。その時は私が力ずくで下ろさせるまでだ」
 隼人を下に見るかのような挑発的な物言いに隼人が眉をピクリと動かす。
「ふぅん――じゃあ、出来ねぇってことで」
 挑発には挑発を。返ってきた言葉に今度はアルベセウスが眉をピクリと動かす。
 ただ、あわわ……あわわ……と狼狽することしかできないリリス。
「フッ……私をガイナと同じと思うなよ」
 その発言に今度はガイナが眉をピクリと動かすと、
「あ? てめぇ、何サラッと調子扱いたこと言ってやがんだ」
 隼人だけではなく、今度はアルベセウスにまで食って掛かった。
 な、なんで今度はガイナがアルベセウスに? と、リリスは不安な表情でナスターシャを見た。理由の分かるナスターシャは苦笑いを浮かべた。
 実は――王国で一番強い男は誰か。そのことを国内の誰に聞いても、決まって口を揃えたように返ってくる答えは『アルベセウス』なのだが、実を言うと未だにガイナとアルベセウスの両雄が真剣にやりあった試しはなかった。二人が真剣にやり合うことになれば、確実にどちらもただでは済まない。下手をすれば命に関わる恐れもあるのだ。『三神』にとって、なにより『国』。二人はそれが分かっているから、やり合おうとはしないのだ。なのに、なぜか今では最強の称号はアルベセウスに。当然ガイナは面白くもなく納得もできるわけがない。先刻の、アルベセウスの何気なく言い放った発言にガイナは敏感に反応してしまったが。そのような、それなりのワケがあるのだ。
 のっけからの険悪なムード。姫様の手前このまま放っておく訳にもいかず、ナスターシャが仕方なく口を開く。
「お前達、いい加減にしてもらおうか。つまらぬ事を言い争うためにこの場に集まったのではないのだぞ。この男の態度もそうだが、私から言わせてもらえば姫様を不安がらせるお前達二人も同類ではないのか? 違うか?」
 言われて、ガイナはばつが悪そうにそっぽを向き、アルベセウスはさして気にした素振りを見せず、静かにナスターシャの言葉に耳を傾ける。
 次にナスターシャは横の隼人へと目を向けた。やはり隼人は円卓に肘を付いたままだ。
「そして、お前だが。お前はどこの国の生まれだ? お前の国にも当然礼節というものがあると思うのだが? お前の国では王に謁見する時に、そのような態度は許されるのか? 今一度考えてみてくれ。お前の国では『それ』が普通に許されるのか許されないのか。もし、考えても『それ』が許されるものだとお前が思うのであれば、その肘は下ろさなくてもいい。それがお前の国では普通のことなんだろうからな」
 そんなことはわかっている。自分がどれだけバカな態度を取っているのか、考えるまでもない。隼人の母国日本で、国の象徴である天皇陛下を相手に、もし隼人がそんな態度を取ろうものなら間違いなく日本国中非難囂々雨霰ものだ。
「どうなんだ?」
 無言のまま、隼人は渋々と肘を下ろした。
 それを見、それでいい。と言った感じで、ナスターシャは「うむ」と頷いた。
 ようやく正常な状況が整ったところで、ナスターシャがアルベセウスに再度の進行を促す。
「分かった――ではもう一度最初から始める。……それじゃあまずは、だが。聞いたところでは、キミの名前はアカトキハヤトと言うようだが、間違いないか?」
 黙る隼人。
「肯定と受け取っておこう。だが、今から続ける質問にはしっかりと答えてもらう、いいな?」
「……い、いいですね?」
 アルベセウスの問いに、またも無言を貫こうとした隼人を見たリリスが可愛らしい声でアルベセウスの言葉を復唱する。
「……ああ」
 これには、隼人も無視することは出来なかった。
「――キミは、『竜』と呼ばれる憑き神の『紋章憑き』のようだが、なぜ突然この国へ来たのだ? 何か目的があってやってきたのか?」
「目的なんてねーよ。ラルファが言ったから来ただけ。詳しいことはラルファが目ぇ覚ましたときにでも聞いてくれ」
「なるほど。では次だが、キミはどこにも属してないようだが、どこの国の出身なんだ?」
「……これなぁ、どこって言われてもなぁ……まぁ、信じる信じないはアンタらが好きに判断してくれよ? 生まれは日本は東京。聞いての通り、この世界の人間じゃねぇわオレ」
 隼人の突飛な発言に、皆一様に食い付くような反応を見せた。
「この世界とはどういう意味なのだ? ――まさか、キミは『喰人』なのか?」
 一瞬、隼人の脳裏には超人気RPGエ○エ○シリーズのイケメン主人公が浮かぶが、即座に消し去った。
「くらうど? んだそれ? 何のこと言ってるのか知らねぇけど、まぁ、そんなんじゃねーよ。日本人だ日本人」
「ニッポン、ジン? ……恐らく民族のことを指しているんだろうとは思うが……初めて聞く言葉だな、うむ。本当にキミは『喰人』ではないのだな?」
「しつこい。だから何なんだよ、その『喰人』ってのは」
「ん、いや、『喰人』については、最後に皆に報告したいことがあるのでな、その時にでも話そう。そうか…………キミが『喰人』でないというのが本当だとすれば、キミの言う『他の世界から来た』人間という説明は俄に信じられなくなったな」
「だから別に無理して信じなくてもいいって、それでオレが困るわけでもないし。アンタらも別に困ることはないだろ? な? はい、ってことでこの話はここでおしまい」
 一方的な隼人の言い分に、沈黙するアルベセウス。
 釈然としないアルベセウスだったが、時間のことを考えるとやむを得ず、次の話へと進めるしかなかった。
 アルベセウスはナスターシャを一瞥する。察知したナスターシャの表情が強張る。一気に緊張が襲ってきた。対してリリスは目を眩いばかりにキラキラさせ、今か今かと待ちきれない様子だ。だってこれが一番の目的で来たんだから。目一杯走ってきたんだから。早く早く! と、アルベセウスに向けた無邪気で好気なその目が強く促していた。
「では、次に移るが――アカトキハヤト、キミは隣の女性、ナスターシャの唇を奪ったそうだが、それは確固たる覚悟があっての行動と取っても良いのか?」
「……は? 覚悟って……何のだよ」
「結婚のことに決まってるじゃないか」
「は? け、結婚? 誰が? 誰と?」
「? おかしなことを言う。キミとナスターシャの二人に決まっているだろ。キミはしたのだろ? 口吻を」
 アルベセウスの言葉に、隼人はチラリ横を向く。そこには隼人に強い? と言うか、まるで心を射抜くような鋭い眼光をピカン! ピッシャー! と放射しまくりなナスターシャが。必然に目が合う。言わずもがな、隼人に向けられたその目の意味は「し・た・よ・な?」と強烈に訴える他に、理由が見つからない。隼人は心の中で「はい、すんません」と詫び、すごすごと逃げるように視線をアルベセウスに戻した。
 うん、なんか、ものすごい怖かった。
「い、いや、うん、まあ、確かに……したのは、したけど。なんでそれがいきなり結婚って話になるんだ? ワケ分からん」
 ナスターシャは絶句し耳を疑う。
「……なるほどな」自分なりに納得出来たアルベセウスはナスターシャを見た。
 ミュアブレンダの言っていた通りに隣に座るこの男は、何も知らないままに私の唇を奪ったというワケか……。もしかしたらの淡い望みも完全に絶たれたナスターシャは「……はは……」と乾いた笑いを出すのが精一杯で、あまりの憂鬱に円卓に両肘を付いて頭を抱えた。
 それを見たリリスは、何がどうなっているのか分からないといった感じでアルベセウスに説明を求めた。頷いたアルベセウスが話を進める。
 端的にではあるが要所要所を分かりやすく説明するアルベセウス。それはリリスだけにではなく、隼人にも向けた説明でもあった。
 リリスのみならず未だ状況が飲み込めない隼人はアルベセウスの説明を聞くに連れて驚きの表情になっていった。
 説明を終えたアルベセウスはそのまま続けるように隼人に話しかける。
「――恐らく、キミはナスターシャに好意を抱いた上で口吻を働いたわけではない。ミュアブレンダにそそのかされて取った行為なのだろう。が、どうだろう? 今回の事故とも受け取れる行為、キミがどうしてもと言うのであれば『掟』に従う義務を発生しないようにすることも出来なくはない。のだが、実を言うとうちのナスターシャはキミとの結婚に肯定的なんだ。考える余地というものを作ることは出来ないだろうか?」
 頭を抱えるようにして頭を垂れるナスターシャの肩がピクリと動く。隼人がアルベセウスの問いにどのような答えを出すのか、興味が働かぬワケがなかった。
 隼人は心底参った。
 確かに『好意』はなかったしミュアブレンダにもそそのかされた。しかし、『そそのかされる』にまで至ったのは、ミュアブレンダが言ったある一言があったからなのだ。
『あなたのものに出来ますよ』
 まさか、それがイコール結婚に結びつくなどとは思いも考えもつかなかった隼人だが、ミュアブレンダの発した言葉に食い付いたのは事実。隼人は自問自答する。ナスターシャを本当に自分のものにしたかったのか? 人を自分のものにするって、どういう状況だ? それって嫌いな人間に対しても出来ることか? 嫌いな人には出来ない、よな? ならなぜキスしたのか。ミュアブレンダの誘いを断るのは出来たはず。高嶺の花……いい女……ボインボイン……ボインボイン……ボインボイン……。
『あなたのものに出来ますよ』
 これに食い付いた事実。これって――『好意』あったから……か?
 暫し悩んだ隼人は、自分なりの結論に至った。
「どうだ? 結論は出せそうか?」見計らったようにアルベセウスが返答を促してきた。
「ん……まあ、結論っつーか……今の段階で言わせてもらうと『先送り』ってことでいいか?」
 これが隼人の出した結論で、つまりはアルベセウスの要望を聞き入れるということだ。
「それは考える余地を作ると言うことで良いのだな?」
「言い方変えりゃあそう言うこと、だな。今、パッと考えたんだけどよ、貰えるもんなら喜んで貰おうかな、と思った。多分って言うか間違いなく、こんな『可愛い子』とは一生目に掛かることはないからな」
 一瞬、隼人を除いた全ての者達が「ん?」と思った。誰が『可愛い』って?
「ほう、なら考えるまでも――」
「だーけーど。さっきも言ったけど、オレこの世界の人間じゃないからよ。分かるだろ?」
「帰るべき世界がある。……が、どうも私には未だに信じがたい発言でな」
「何度も言うけど、信じなくてもいいから。ただ、オレが今言ったことだけ覚えておいてくれたらいいよ。それがあるから、オレは易々と決められないのだよ」
「なら先送りなどせずに今この場で断ってもいいと思うのだが。そのような理由が存在するのなら、どう足掻いてもナスターシャとキミが一緒になることなど出来ないのでは?」
 隼人は指を立て、チッチッチと動かす。
「甘いな。やはり見たまんま、アンタには柔軟さってものが足りないようだな。万が一ってものがあるだろ? この世に絶対はないだろ? オレがこの世界をメチャクチャ気に入るようなことがあれば、もしかしたら?」
「ふむ、確かに一理あるな」
「ま、限りなくゼロに近いんだけどな。でもそこは、ほら、アンタの頑張り次第だからな?」
 笑みを携えた隼人はそう言って横のナスターシャへと話を振った。いきなり振られたナスターシャは体をビクッと驚かせ、隼人の方を向いた。
「が、頑張るって……何を?」
「もち接待っしょ」
「は? 接待? 私がか?」
「あったり前だろ? え? なに? もしかしてアンタ何も苦労しないでイイと思ってんの? 何もしないで、オレがこの世界に残ってくれると思ってんの? は? オレを舐めてる? アンタ何様ですか?」
 相手が信じようが信じまいが、『この世界の人間ではない』という後ろ盾を持つ隼人は俄然強気だ。
「い、いや……そ、それは……だな」
 高圧的に言い放つ隼人に、ナスターシャはたじろぐ。
 それをジッと見ているリリス。た、楽しい。具体的に何が『楽しい』かと問われれば答えに詰まるのだが、何か、楽しかった。そしてあまりにもこの国のことを理解してなさ過ぎに、その上『三神』を前にしても萎縮するどころか対等以上の物言いで話す隼人に、リリスは先程の隼人の発言があながち嘘だとは思えなくなっていた。逆にガイナは一人蚊帳の外にいるようでつまらない。大半の興味が削がれたガイナの神経は緩みきり、しまいにはあからさまに大きな欠伸をする始末。さっさと切り上げて次の話に進んでもらいたかった。
「あ、あの、いいですか?」
 声の主は申し訳なさそうに挙手したリリスだった。
 アルベセウスは「どうぞ」と微笑む。許可を得たリリスは隼人へと視線を移す。
「えっと……アカ、トキさんと呼べばよろしいのでしょうか?」
「え? あ、ああ……隼人でいいよ。そっちのが慣れてるし」
「それじゃあ、お言葉に甘えまして――ハヤトさんにお聞きしたいのですが、『接待』とは具体的にどのようなことを?」
「どのようなことって……そこは『する』方が考える重要なとこじゃない? オレが指定したことを相手がそのままやっても、それは『接待』とは言わないでしょ?」
「あ、そう言えば確かにそうですね。なに私はバカなことを聞こうとしてたのかしら」
「接待する目的は決まってるんだからさ。オレに『是が非でもこの世界に残りたい!』って思わせるようにもっていけばいいんだって」
「そ、そんなことあり得るものか! お、おま、おま、お前は私と結婚したくないから、最初から不可能と分かりきってることを言って私に諦めさせる気なんだろ! イ、イ、イヤか! そんなに私と一緒になるのがイヤか!」
 突然、形相を変えたナスターシャが声を張り上げて不満を口にする。
 本気でウトウトし始めていたガイナは一気に眠気が吹っ飛んだ。
「何もそんな回りくどいことをせずに、イヤならイヤと! 嫌いなら嫌いとハッキリと言えばいいだろ!」
「ちょ、ちょっと、ナスターシャ少し落ち着いて」
 慌ててリリスが言葉でなだめる。
「はあ? なに勝手に勘ぐってんだよ。そんなこと少しも思ってねーよ」
「ウソを言うな!」
「ウソじゃねーよ」
「なら、しろ」
 隼人は唖然とする。
「『しろ』じゃねーだろ……あんたオレの話の一体何を聞いてたんだ?」
「あのような与太話、信じられるわけがないだろ。そもそも『信じなくていい』とはお前が言った言葉だろ」
「あー……確かに言ったけど、ちっ……さすがに面倒くせーなこれは」
「面倒くさい……だと? 面倒くさいとはなんだ! これは私の一生が掛かった大事なことなんだぞ! 言うに事欠いて……それを面倒くさいだと? 貴様はとことんまでに私を愚弄するか!」
 険しい表情からパワーアップし、鬼の形相となったナスターシャが隼人に怒声を浴びせる。
「……わ、分かった分かった。分かったから少し黙ってくれ」
「何が分かったのだ!」
「無理。イヤとか嫌いとか抜きにして、とりあえず結婚は無理。しない。出来ない」
「それを受け入れるのは無理だ」
 またまた、こんな時に何をご冗談を。
「はっ? 今アンタ言ったよな? ハッキリ言えって。だからオレはハッキリ言ってやったんだろ」
「ハッキリ言えとは言ったが、それで私が納得するかは別問題だ」
 隼人は言葉が出ない。頭が痛くなってきた。
 ここまで理性を欠落させたナスターシャを見るのは初めてで、リリスとアルベセウスは何て言ったらよいのか言葉に悩む。ガイナは『なんか面白くなってきたかー!』と興味が再燃し始めた。
「いやいや! 納得しないとダメだろそこは」
「は? お前は私に『掟』を破れと言うのか! 私に死ねと言うのか!」
「誰もそんなこと言わねーし! てか『掟』は、ほら、そこの金髪の人が何とか出来るって言ってただろ! だから大丈夫だろ!」
「それはならん。『掟』は我が隊代々に伝わる絶対のモノ。部外者が容易くどうこう出来るモノではないのだ!」
「出来るっていってるじゃねーか!」
「出来ない!」
「出来る!」
「出来ない!」
 鼻息荒い押し問答の末、同時に二人はアルベセウスを睨むように見た。
「あんたさっき出来るって言ったよな?」
「長い歴史上に置いて一度たりとも、『掟』に例外が認められた記録など存在しないのだぞ?」
 二人同時の問いに、アルベセウスは一呼吸置いてから話し始めた。
「ナスターシャ。こればかりは仕方ないのではないか? 過去に例外が存在しないのと同じく、この男が言う『他世界』からこの世界に来た人間も、過去にも今にも、この男しか存在していないのだ」
 隼人はウンウンと何度も頷く。
「隊の『掟』はこの世界に生きる人間に作用するのがしかるべきではないだろうか? そして今回の例外を悪例としないためにも新たに一文を加えることを進める。それが後に生きる者達への、お前のするべき役目ではないか?」
「な? そう言うことみたいだからさ、今回は」
「……分かった」
 腑に落ち無いといった表情ではあったが、アルベセウスの言葉に従ったナスターシャに、多少の抵抗を予想していた隼人は若干の拍子抜けはしたものの安堵の息を漏らした。が、キッと隼人を睨むように見たナスターシャがとんでもない言葉を付け加える。
「――しかし、結婚が叶わぬと言うのなら……私は私の意思で自らの命を絶つ」
「は?」
 これには場にいる全ての人間が驚いた。
「いきなり何を言い出すの! ふざけたことを言うのはやめてちょうだい!」
 大きく叫んだのはリリスだ。明らかに怒りを含んだその声色に、ガイナとアルベセウスも、リリスが怒って当然だと言わんばかりに呆れ混じった表情でナスターシャを見ていた。
「姫様、私は決してふざけてるわけではありません。紛れもない本心で言ったまでです」
 サラッと言うナスターシャに、リリスは一瞬目眩がしそうになる。ナスターシャの瞳が、今までに何度も見てきた、死地に赴く兵士達の『覚悟を決めた』目と重なって見えたのだ。
 ――マズッた。隼人は心の中でそう呟いた。
 オレはとんでもなく厄介な、手を出してはいけない部類の女に関わってしまったのかもしれない。隼人は今更ながら後悔の念に駆られた。
「し、死ぬとか卑怯じゃねーか。あ、アンタ! そんなの脅しと一緒だろーが!」
「黙れ」
 睨み付け、まるで別人のように低く言い放ったナスターシャの一言に、本気で萎縮した隼人は素直に従い黙るしかなかった。
 ナスターシャはイスから立ち上がると隼人に近寄る。
 見下ろすナスターシャに、見上げる隼人。
 ナスターシャは手を伸ばすと隼人の胸倉を掴み、強引に立ち上がらせた隼人の顔を眼前に持ってくる。されるがままに従った隼人はナスターシャの気迫に押され、唾を飲み込みこんだ。
「……お、おまえが私のことをどう思っているのかは分からんが、私は絶対にお前を逃がすつもりはない。アルベセウスの言うことはもっともなことで、理解し、飲むことが当然なのだろう、が。ダメなんだ……それではダメなんだ……私は」
 最後の方、切羽詰まったように言うナスターシャに、リリスとアルベセウスの二人は感付いた。
「……おまえが……お前が悪いのだ……。お前が私の唇を奪ったりなんかするから……あのシーンがずっと頭に浮かんでは消えてくれないんだ……私は悪くない……お前が悪いんじゃないか……お前が、お前が……」ナスターシャの頬が朱に色付いていく。
 これよ! これ! 次の展開に期待せずにはいられないリリスは、思わず頬が緩んでしまう。そんなリリスをガイナはジーっと見ていたが、何が楽しいのかサッパリだ。期待していた殴り合いにはなりそうになく、つまらん、の一言。案の定に欠伸が漏れた。
「お前が……私を……私がお前を好きになるようにさせたんだろ……」
 そう言ってナスターシャは隼人を押すようにして、掴んだ胸倉から手を放した。その勢いで隼人はよろつきながら尻もちを付くようにしてイスに腰を落ち着かせた。
 面と向かって告白された隼人はナスターシャの視線から逃げるように目を逸らし、ただ黙るしかなかった。告白されること自体に悪い気はしない。が、かといって素直に喜ぶ気にもなれなかった。
 期待する答えが返ってくるなどとは微塵も思ってないナスターシャは一方的に話を続ける。
「……責任を持って『嫌い』にさせてくれ……」最初にそう言ったナスターシャは逆提案を上げてきた。ナスターシャが今取れる最大の譲歩案であった。
 少しややこしい言い回しに、おつむがあまりよろしくないガイナと隼人は理解するのに多少の時間を要したが、簡単に言えば、こうだ。
 隼人が始めに言った提案は受け入れる。しかしその逆のことも隼人にも要求する。
 つまりはナスターシャが、隼人をナスターシャが好きになるようにし向けることが出来るか。隼人が、ナスターシャを隼人が嫌いになるようにし向けることが出来るかだ。
 もっとかみ砕いた説明をすると、隼人がナスターシャに惚れたら、ナスターシャの勝ち。ナスターシャが隼人を嫌いになれば、隼人の勝ち。たったそれだけの話。
 ナスターシャが隼人を嫌いになることが出来れば、自害に走ることなく、すんなりとアルベセウスの上げた『特例』も受け入れることが出来ると言う。当然、どっちつかずな曖昧な態度で終わることは許されない。もし『曖昧』が延々と続くようであれば、その時は勝負放棄と見なし、隼人は『掟』に準じナスターシャと結婚しなければならない。
 なんとか理解出来た隼人の顔は不満を隠そうとしない。隼人に、この世界に残るという意識がほんの少しでもあったのかそれは分からないのだが、その言葉を利用し、接待と称した『あられもないご行為』で、あんな乳こんな乳そんな乳を心ゆくまま堪能させてもらおうという計画であったのだ。ナスターシャの純粋な気持ちを、邪な気持ちで利用しようとした最低な人間、それは隼人。
 スケベ、策に溺れた。
 色々と抗議を行いたい隼人であったが、自殺するとか口走ったナスターシャにそれをぶつけて良いものか悩んでいた。ちょっとしたことでも敏感に反応し、癇癪を起こされたりするんじゃないかとついつい思ってしまう。
 そんな隼人の心の声を読み取ったのか、ナスターシャは釘を刺しに来た。
「この提案、断れば……分かっているだろうな?」
 死ぬんだろ? そう言われてしまっては隼人にはどうすることも出来ない。「あぁ……もう!」と、この先どうとでもなれと、隼人は半ば投げやり気味に受け入れた。
 一応の終わりにナスターシャはホッとした息を吐き自分の席に戻った。座る直前、笑みを携えたリリスが「頑張って」と声をかけてきた。照れ恥ずかしそうに、「頑張ります」そう言ったナスターシャの顔は、幸せを予感させるものが溢れていた。
 臨時に開かれた会議が始まってから一時間を経過。窓の外に広がる城下町の灯の明かりもポツポツと消え始めていた。
 リリスにとってのメインイベントが終了し、リリスは出そうな欠伸をかみ殺す。いつもなら、リリスが夢の世界に旅立っている時間帯に入っていた。
「次で終わりますので、もう少し我慢を」
 微笑み言うアルベセウスに、「大丈夫です」と目に見えて大丈夫でないリリスが会議の進行を促した。頷いたアルベセウスが口を開く。
「それでは、次の――最後になるが。今日皆にこのような時間に集まってもらった一番の理由は、他でもない――今から始める話にある」
 アルベセウスの言葉に、場の空気が一変する。眠そうにしていたリリスまでもが凛とした表情に切り替わった。
 一層真剣さを増した表情のアルベセウスが本題へと入った。
「――今日、『地食』を確認した。場所はツェンダーテンの町から、東の方角に一五キル米ほど離れた、地図で言うと丁度マコロ平原辺りか」
 それはあまりに嬉しくない報告だったのか。普通だった部屋の空気が、重苦しい空気へと一変した。
「ツェンダーテンか、近いな。規模は?」
 ナスターシャの言葉にアルベセウスが苦笑いを浮かべた。
「それは皮肉か? 私が確認するだけで、何もせずに戻ってきたのだぞ」
「そのようなつもりで聞いたのではないのだがな。ふむ……小規模か。よりにもよってこんな時に」
「……『こちら』と繋がるのは?」
 眠気がスッと消えた、不安そうな目のリリスが聞いてきた。
「応急に封を施してはきましたが、それも持って精々四日だと」
「そうですか……」
 迫るリミットに、リリスはもう一段深く気落ちした。
「発生しちまったもんはしょうがねぇだろ。いつも通りにアルベセウスは城に残って、オレとナスターシャでどうにかするしかねぇんだろ?」
「いや、今回は私も出る。私とガイナでツェンダーテンの『方』に向かう」
 アルベセウスの言葉に隼人以外の人間が過敏に反応する。感が良くない人間でも、察知するには十分だった。
「おいおい……『方』って、おまえ」
 ポジティブ思考の強いガイナであったが、これには辟易とするほかなかった。
「そうだ。『地食』は一つではなく二つ発生している。確認から戻った者による報告によると、場所はここから街道に沿って南に五〇キル米ほど離れた所にあるオージス平原。活動が活発なため、『地食』の規模は正確に測れてはいないが、『小』に進行する恐れがあるようだ。現在、直属の衛兵が数人現場に残って封縛にあたってはいるが、こちらもマコロ平原の『地食』と同じに、押さえ込めるリミットは四日と言う」
「なるほど。ということは、こちらを私に任せると言うことだな?」
「ナスターシャ一人を向かわせるのですか!? そんなの危険すぎます!」
 一人声を荒げるリリスに、ナスターシャは心配は無用とばかりに口元を綻ばせて見せた。
「姫様、私は決して一人ではありません。信頼出来る強い仲間が沢山おりますから。私を心配してくれる姫様のお気持ちは大変嬉しいことですが、どうか私の隊の人間達をもっと信頼してやってください」
「ナスターシャ……ですが」
 そうは言われても、今回は相手が相手だ。一度張り付いた不安は容易く剥がれてはくれなかった。
「――そのことについてなんだが」
 アルベセウスが隼人に視線を向けた。追って全ての視線が隼人に集中する。
 飛び交う専門用語についていけず完全に部外者を決め込んでいた隼人は、不意に視線を向けられ戸惑う。
「な、なんだよ」
「今日初めて言葉を交わしたキミに、この様なことをお願いするのはどうかと思うが……」
 確信に近い悪い予感がした。
「『喰人』を倒すために、我々にキミの力を貸してくれないだろうか?」
「……は? 力を貸してほしいって? なんで? ……何のためによ?」
 具体的な話の要領を得ない隼人は、拒否することよりも先に次第の説明を求めた。
「これは失礼をした。そう言えばキミはこの世界の人間ではなく『喰人』についても何も知らぬようだったな」
「『喰人』を倒すためとも聞こえたけど……『喰人』ってのは悪い奴か何かか?」
「『悪い奴』などと、そんな可愛いモノではない。『悪魔』そのものだ。奴らはまるでゲームを楽しんでいるかのように殺生を繰り返し、その殺めた人間の『生』を喰らうのだ」
 真剣な顔で話すアルベセウスに隼人は静かに唾を飲みこんだ。アルベセウスは間を空けず話を続ける。
『喰人』とは――『地食』と呼ばれる、この世界と地下世界を繋ぐ現象によって地上に現れる人型の怪物のことで、『地食』の発生規模によって、地上に現れる『喰人』の強さが異なり、規模が小さい程に現れる『喰人』の戦闘能力は高いらしい。
 ツェンダーテン東部に発生した『地食』は『小』。現れる『喰人』の戦闘能力は上位紋章憑きに匹敵するレベルとアルベセウスは言う。そして極稀に上位紋章憑きを遙かに凌ぐ『希少喰人(ロゼ・クラウド)』が現れることもあるようで、今回アルベセウスが『地食』の確認をし『小』と分かるや何もせずに戻ってきた理由が、それらしい。
 過去に一度だけ『希少喰人』がリーンハルスに現れたことがあり、その時は『三神』が束になることで辛くも勝利を収めることが出来たという。
「……そんな奴相手にオレなんかが加わったところで、正直焼け石に水だと思うぜ? 隠しても仕方ねーから言うけど、オレ、『竜神』の力ってのまだ全然使いこなせてねーからな。ま、ぶっちゃけて言うとオレの今の取り柄はひたすらに頑丈なところだけだわな」
 最後の言葉を言うとき、少しだけ隼人は情けない気持ちになった。自分には『最強』と成りうる為の超人的な力が宿っているのは分かっている。しかし悲しいかな、ひと月前までただの兄ちゃんであった隼人が、自らの持つその強大な力に自らが付いていけてないのだ。ガイナとの一線で特にそれを痛感していた。明らかに『慣れ』というものが不足していた。
 そんな隼人の気持ちをよそに、突然『女の子』が話に加わってきた。隼人の頭の中に。ここにいる全ての人間の頭の中に直接。
「いいじゃない。やってやりましょうよ」
「……何者だ?」
 知らぬ声に対して怪訝な声を上げたナスターシャと違って、知った声に隼人は安堵した。声の主は、隼人の憑き神であるラルファエンクルスであった。
「ラルファか? もう大丈夫なのか?」
「んー、まだ少し頭が痛いわね。だから悪いけどまたすぐに落ちさせてもらうわ」
「そうか。あんまり無理すんなよ」
「あら、優しい。何か良くないモノでも口にした?」
「うっせーよ、オレは基本的に女には優しいつってんだろよ。……てか、今『いい』とか言ってたけど一体何が『いい』んだよ?」
 この時、何かを言いたげな顔をしたアルベセウスが話を遮るようにして咳払った。
「あ、悪い悪い。コイツはラルファって言って、もう察してるとは思うけどコイツがオレの『神様』ってやつだ。ほら、ラルファ自己紹介しろ」
「……今、私の方が下に見られた気がすっごくしたんだけど……気のせいかしら?」
「ん? ……気のせいだろ『神様』」
「なんか釈然としないんだけど……まあいいわ。――えっと、そうね自己紹介だったわね。私が隼人の憑き神で最強の『神』、『竜神』ラルファエンクルスよ」
 これにガイナが鼻で笑った。
「はっ、何が『最強』だか。オレの一撃で意識吹っ飛んだ奴の言うことかよ」
 カッチーンときたラルファだったが、自らに『冷静に落ち着いて冷静に落ち着いて……』と呪文のように言い聞かせて辛くも冷静さを保つことが出来た。何とも沸点の低い『神』であった。
「はいはい。『アレ』を知らないってホンっト、いいわね。あなた……私の意識がある状態であのまま隼人と戦い続けてたら、間違いなく『アレ』によってあの世に逝ってたわよ?」
「あぁ?」
 その発言に、到底看過出来ないと言わんばかりにガイナの表情が不快を露わにする。
 これは別に強がりでも何でもない。確固たる自信からくる発言だった。隼人にはもう一つ『アレ』が憑いているのだ。隼人のまだ未熟な力を補うには十分すぎる程の、圧倒的な『アレ』な存在が。
 こ、こいつ――隼人は薄々感付いた。
「おい。アレアレって、『アレ』はお前のもんじゃねーだろが。てか名前で呼べ、名前で」
「うっさいわね。私は隼人の『神』なのよ、隼人の物を私がどうしようが私の勝手でしょ。私の物は私の物、隼人の物も私の物よ」
「……お前はジ○イアンか」
「ほう……どうやら彼には、まだ我々に話していないことがあるようだな」
「別に隠してるつもりはねーけどよ。で? どうすんだ? いいのか?」
 隼人はアルベセウスの問いに正直に答えると、話をラルファへと振った。
「まどろっこしいのは抜きよ、呼んで」
 必然的に、場にある興味の色を濃くした八つの瞳が隼人に向けられる。
 やれやれといった感じで肩を動かした隼人は立ち上がると、何も言わずに部屋にある一番大きな窓に向かって歩き始めた。
「な、何をしている」
 窓に手をかけ勝手に開いた隼人に、慌てて声をかけるナスターシャ。
 隼人は横目でナスターシャを一瞥し、次にアルベセウスを見た。
「ちょっと外に出るから、つき合え」
 そう言って跳ねた隼人は、窓のひさしに手を掛けるとクルリと器用に逆上がり夜の外へと飛び出す。
 面白いことになりそうだ。と興味に胸躍るアルベセウスが続いて外へと飛び出し、次にナスターシャ。最後にガイナが「姫様こっちだ」と、リリスを抱き抱えて隼人を追って飛び出していった。
 城の一番高い、尖塔の屋根上に先に到達した隼人が四人を迎える。相当な高さにリリスはギュッとガイナにしがみつくのに必死だ。
 下から吹き上げる強い風が隼人の銀髪を靡かせ、鼻先を擽る。
 場の誰かが口を開くよりも先に、若年男性の声が直接脳へと語りかけてきた。
「よう、ラルファ。久しぶりじゃねーか、元気してたかよ」
 ご存じ、火神イーヴェルニングだ。
「あら、イーヴェ。久しぶりね。居たんならさっさと出てきなさいよ」
「あ? 出たくても出られなかったんだよ。さっきお前らが居たあの部屋、オレら『憑き神』が干渉出来ないよう、ちょっとした印が施されてんだよ」
「そうなの? でもどうしてそんなことを?」
「あそこは私的な時間を過ごせる、唯一の部屋なんですよ。憑かれる人達も、私達に四六時中憑かれていては『やりたいこと』もできませんから」
 問いには、イーヴェルニングではなく、新たに割り込んできたミュアブレンダが答えると、最後に久しぶりの再会の挨拶を互いに交わした。
 ナスターシャとガイナ、そしてリリスまでもが、ミュアブレンダの話を聞くや否や、なぜかこぞってアルベセウスに視線を向けた。アルベセウスはその視線がいたたまれないのか「んっんんっ」と喉を鳴らすと、その視線から逃げた。
「ああ……なるほどね」
 声に出して納得したラルファ。黙ってはいるが納得した様子の隼人。しかし、さすがのエロリスト隼人も『公開プレイ』だけは許すことはできないようで、アルベセウスに少なからず同情していた。
「そ、そんなことよりもだ。こんな所で一体何をしようというのだ? わざわざこんな所に呼んだんだ、それなりのものを期待するぞ?」
「まあ……期待してもいいんじゃね? 最初ラルファが驚いたくらいだからな。な?」
「……余計なこと言わない」
 ただ一人。ミュアブレンダだけが、おおよそ気付いた。
「もしかして、『ランマル』ですか?」
「お、当たり。正解。よし、そんじゃ今から乱丸呼ぶけど……。いいか? お前ら絶対に手ぇ出すなよ、乱丸はオレの『ペット』だからな」
 そう言って隼人は周りの否応聞くことなく、人差し指と親指で輪っかを作り、それを口にくわえた。指笛だ。
 隼人が吹くと、高く鋭い笛の音が夜の空に、夜の町に響き渡る。
 吹き終わり、一瞬の静寂が訪れる。
 静寂の中、僅かな異変をいち早く察知したのがアルベセウスだった。大気が異様な震え方をしていた。だが、それを口にするよりも――瞬間、来た。
 一発の轟音と共に刹那の速度で降臨した漆黒の巨竜。あまりの速度とその重量で、爆風かの如く巻き狂う暴風が吹き荒れる。
 吹き飛ばされることなく耐えきったアルベセウス、ナスターシャ、ガイナと、ガイナに抱き守られたリリス。そしてイーヴェルニング、グールバロン、ミュアブレンダ。初めて見る『化け物』を前にして言葉を無くしていた。
 それでも、気丈を取り戻したアルベセウスが口を開く。
「……これは? まさかキミのか?」
「ああ。すげーだろ」
 隼人が右手を肩の辺りまで上げると、乱丸がその手に顔を擦り寄せてきた。いつものように隼人が乱丸の喉元を撫でてやると、乱丸は気持ちよさそうに大きな目を細める。さっきまで乱丸を恐怖の目でしか見ていなかったリリスであったが、それを見てリリスが「……わぁ」と感心したような小さな声を上げた。
「お?」ガイナが声を上げた。
 とてもキュートな容姿に似合わずに肝が据わっているというか、それとも人一倍に好奇心が旺盛なのか、ガイナに抱かれた腕の間からリリスが恐る恐ると手を伸ばしていた。
 気付いた乱丸が、伸ばされた小さな手を凝視する。手の奥に見えるリリスの目と、乱丸の青く大きな目が合うのだが、リリスは臆して怯むよりも、逆に「ぉ、ぉぃで……」と声を掛ける。乱丸の耳がピクリと動く。人語を喋ることはできないが理解できる乱丸は暫くして、その巨大な顔をリリスへと近づけていった。
 ガイナは警戒した。ほんの少しでもリリスに危害を加えたら、否、加えるような行動を見せれば即座に渾身の右ストレートを、その顔面にぶち込むつもりだ。
 しかし、どうやらそれは杞憂に終わった。
 何事も起こることなく、リリスの手は乱丸の立派な鼻先に触れることができた。
「……硬くない」
 乱丸の尖った鼻先に触れた感想だった。乱丸の肌は金属のように黒光っていたから、てっきりキンキンに硬いものだと想像していたのだが、意外に柔らかい。知ってるところ、ペガサスの皮膚の硬さとそれほど変わらなかった。
「柔らかいだろ? それは、えっと……」
「リリスです!」
「おう、ありがと。それでな、乱丸の皮膚が柔らかいのはな? リリスに気を許してるからなんだわ」
「そうなんですか? え? それでは、いつもは?」
「硬いよ。特に、マジになったときなんかは半端ねーぞぉ」
「ほう、それは是非見てみたい……ところだが、残念ながらソレはまた次の機会にでもお願いしなければならないようだ」
 アルベセウスがそう言い終えるのと殆ど同時に、城から、そして続いて町の至る所から大きな鐘の音がけたたましく鳴り響いた。少なくなっていた町の灯りが再び灯されていくと、それは瞬く間に町全体に波及していった。
 ……まあ、こうなるわな。内心苦笑した隼人の視界一面、囲むようにして、おびただしい数のペガサスナイトの姿が。そのペガサスは普通のペガサスよりも一回りも二回りも大きく、なかなかの威風を放つ。鞍上の背にはもう一人、ペアという形で深紅の衛兵レッドマジシャンが跨っていた。
『風』の軍隊の一つを任される、シーク・ティターニア副将軍は乱丸を前にして震える我が身を抑えることができなかった。
「き、奇っ怪な。なんですか、この禍々しい化け物は! くっ! お、落ち着きなさい!」
 突然暴れ始めたペガサスに、シークは危うく振り落とされるところだった。同乗するライラック・ワードナーに至っては『火』の副将軍らしからぬ情けない声を上げ、シークの腰にしがみついていた。
 形容異質で巨大な胴体から感じる強大な威圧感に耐えられずに、ペガサスが気狂いを起こしたかのように激しく入れ込むのを、鞍上のシークは手綱を目一杯に引いてコントロールするのに必死だ。そしてそれはこの一頭で留まるわけもなく、見ると殆どのペガサスが異常な興奮状態に陥り、その巨躯を暴れさせていた。
「何という体たらくか……」ナスターシャは左手で顔を押さえると頭を振った。
「ははっ、お前らんとこの奴らおもしれぇな、おい」
 この場に『巨』に属する隊の人間が居ないのをいいことに、ガイナは余裕で楽しんでいた。
「――ナスターシャ様?」
 誰からともなく聞こえた、ナスターシャの名を呼ぶ声に反応して見せたシークとライラックの二人は慌ててナスターシャの姿を探す。
 居た。尖塔の屋根にはナスターシャの姿だけではなく『三神』全ての姿、そして女王であるリリスの姿までもが。なぜこのような場所に女王が。と詮索するよりも、相対して立つ隼人を視界に捉え、そして乱丸。ライラックの脳が瞬時にはじき出した答えが――やはり、敵かっ! だった。
 次の瞬間、ライラックが決死の覚悟でペガサスの背から乱丸へと向かって勢いよく跳び降りる。
 乱丸が下げていた頭を起こす。
「ライラック!」シークが名前を呼ぶが、下からはアルベセウスが制止を促していたが、その声はライラックには届かない。
 レッドマジシャンは武器を一切持たない。
 あるのは一つ『火』の魔法詠唱。
 ライラックは空中で素早く右拳を引いて構える。
「――レイ ザガン バレム――」
 攻撃系火系魔法――『ヴォルゲイン』
 周囲一帯が真っ赤に色付き、その染めていた『赤』はライラックの引いた右腕に瞬く間に集約されていった。出来上がる真っ赤に輝く球体。
「やっぱコイツが扱う炎、悪くねぇな。良い質だぜコレ」
 イーヴェルニングは感服した。
 アルベセウスは嘆息は吐いたもののライラックの突発で危険な行動を止めようとはしない。少しでも乱丸の力量を計る良い機会と判断したからだ。考えはガイナとナスターシャも一緒なようで、ナスターシャはライラックが放たんとしている『ヴォルゲイン』に備えて、胸元で印を結ぶ。
「――イア ラウム――」風の加護を求める言葉を述べたナスターシャを中心に、青白い光が屋根にいる全ての者達を包む。隼人を除いて。
 隼人は「ちょ、ちょい!」と慌てて光の中へと駆けていった。間髪――
「――ヴォルゲイン――! 喰らわんかぁぁぁぁぁいっ!」
 乱丸の頭上から、狙いを頭部へと定め合わせたライラックは、引いた拳を勢いよく突き出した。放たれた炎弾は一発。が、放たれた炎弾は新たに数百の炎弾を一気に生みだすと、一斉に乱丸へと降り注ぐ。灼熱の集中豪炎弾。
 乱丸は爆音と共に炎弾の雨をまともに浴び続け、魔法で作り出された炎は持続性に特化し、消えることなく皮膚にまとわりつくように燃え続け――やがて乱丸は豪火に包まれた。
 打ち終わり、落下するしかなかったライラックを、強引にペガサスを操って先に回ったシークが辛うじてペガサスの背で受け止めた。
「無茶をしすぎです! 死ぬ気ですか!」
 声を大にして言うシークの目にはうっすらと光るものがあった。
「そ、そない怒りなや。大将が見とるんやけ、少しは気張ったらんとあかんやろ?」
「だからといって、それで死んでしまっては元も子もありません。……残される私のことも少しくらい考えてください」
 前を向いてるシークの表情はライラックからは見えなかったが、声の質が明らかに落ち、気分を害しているのがライラックにはすぐに分かった。
 ライラックは背後からシークを抱き、耳に近い距離で、
「こらこら、拗ねへん拗ねへんの。悲しい思いさせた分、ちゃんとベッドでぎょうさん甘えさせたるから、それで許したってな?」
 囁くように言い、最後耳にフッと息を吹きかけると甘噛んだ。
「ぁん……そ、そんなつもりで、ぁ……ダメ……言ったんじゃありません……ん…………お……お、降ります!」
 耳から離れてくれない。執拗にして優しく、性感帯である耳を責めてくるライラックに、シークは耐えきれなくなる前にと、ナスターシャ達の待つ屋根上へと急降下していった。
「おわっ! ちょ、き、急に下がりなや!」
 屋根へと降り立ったシークはペガサスから降りると、赤くなった顔を隠すようにして足早にナスターシャ達の元へと駆けていった。
「あー……怖かった……」
 続いて降りたライラックは燃え盛り続ける乱丸へ一度視線を向けてから、シークの後ろを追った。
 先に『三神』の元へ立ったシークがリリスに向かって頭を下げる。
「――ナスターシャ様、これは一体……」
 次にやってきたライラックがリリスに向かって頭を下げる。
「――なんや、ごっつぅ大きいからビビッたけど、何のことはない、コイツとんでも無い見かけ倒しで拍子抜けしましたわ」
「俺様のリーサルウェポン舐めんな」
「へ? えっと……キミ、誰?」
「お前が今燃やした『竜』の飼い主だよ。てか、なんでバリバリに関西弁喋ってんだよ」
「え? 何? カンサイ、ベン? なんやカンサイベンって? いや、そんなん今はええわ。それよか、今キミ『飼い主』って言わんかったか? え? 飼い主って『コレ』の?」
 ライラックは燃える乱丸を指差した。
「う、ウソやん! こんな飼い『ネコ』ならぬ、飼い『化け物』おるなんて、初めて聞いたで! ホンマ冗談きっついでキミ」
「……お前、大阪人だろ」
 間を空けず、直にアルベセウスから詳しい説明を受けるのだが、聞いた二人は驚きを隠せない。
「ホンマの話やったんか……すごいなキミ。っと、そうなると……この『竜』ってのは悪いヤツやないっちゅーことやな……えらいことしてもーたな、焼いてもーたわ、オレ」
「多分大丈夫だろ――乱丸ー! 平気かー!?」
 隼人の声に反応した乱丸は、待ってましたと言わんばかりに畳んだ翼を広げると、回転を伴った上昇をみせ、体全体にまとわりついた炎を一気に散らし飛ばした。
 アルベセウスは予想通りといったように「ふむ」と頷く。
 乱丸の体は何層にも重なる表皮を、それも薄く一枚を炭化するだけで無傷のまま。その炭も脆く、軽い風に剥がされ散り散りと流されていった。
 夜空に滞空する乱丸を見上げるアルベセウス。その横に並び立ったライラックも同じように見上げた。盛大な溜め息が出た。
「――かなりの強度だな」
「大将。強度も何も……こんなん……自分、自信無くなりますわ。さっきの結構ホンマもんの一撃やったんやで? ……めっちゃ元気やん」
「そう言うな。今回は相手が悪すぎたと言うことだ」
「……まぁ、敵やなくて良かったですわ。もし、こんなんが敵におったら、大将、うちじゃあちょっと厳しかったと思いますわ」
 ライラックは不敵に笑うとアルベセウスの胸をトンと叩いた。
「ま、紋章持ってる大将の頑張り次第やけどね」
 ライラックの言葉に対してアルベセウスは意味深な笑みを返した。
「何を言うか。そうなったときは『お前』もだろ?」
「何言うてんの。あんまり『人間』に無茶させたらアカンで」
「相変わらずタヌキを演じるやつだ」
「そないなこと言いなや。ホンマの話やし。――っと、いらん話し過ぎたわ。どうやら大事にもならん感じやし……そろそろ自分ら戻りますわ。シーク、いこか」
 ライラックに一声掛けられたシークはリリス、三人の将軍と頭を下げると愛馬の元へと向かった。遅れてライラックがリリス達に一礼し、去り際に隼人に話しかけてきた。
「キミ、味方になれとは言わんけど、くれぐれもウチの敵になるようなことは考えんとってや? これはな……キミの為を思って言ってるってのもあるんやからね?」
 柔和な表情で言うライラックだが、隼人は得も知れない寒気を感じた。そんな隼人を残してライラックはシークの元へと走っていった。
 見送られたライラック達は城内に戻るのではなく、町へと降りていく。騒ぎの沈静化を図りに向かったのだ。隼人は察する。見えるところにこんな化け物が居続けたのでは収まる騒ぎも収まらない。隼人は乱丸に向かって、引くよう命令する。
 乱丸はまだまだ物足りないのだろう。来たときとは打って変わってダラダラとした態度で不満をアピールしながら空の彼方へと消えた。
「それでは一旦、中へと戻ろう。姫様の体に長時間の寒風は堪える」
 言ったのはアルベセウスだ。従って、皆が軽い身のこなしで城の中へと戻る中、隼人は気になっていた。ライラックという人物が何者なのか。当たるも外れるも五分五分という隼人の直感ではあるが。もしかしたら、あいつがこの国で一番強いんじゃないのか? とさえ思っていた。しかし、圧倒的に情報が不足している今、あれやこれと自己で詮索し、憶測で判断するのは無意味に他ならない。直に隼人は考えるのをやめた。
 部屋に戻ってからは、実に話はスムーズに進んでいった。
 隼人の『最強』となるためのプロセスの一つになるということで、『喰人』討伐への荷担はあっさりと決定。勿論、ラルファの一存で。
 その他にも。この国への力添えが続く限りは、隼人の生活に必要な衣食住の全て、不便をきたすことがないように最大限の誠意を持って用意してくれるとのこと。俗に言うVIP待遇だ。
 待遇とは違って、一つの制約も課せられた。
 今、皆が集まっているこの部屋だ。この部屋に限っては、次からは他の憑き神と同様にラルファの意思は遮断させてもらうとのこと。ラルファは不満を口にしたが、『人権保護』を発狂気味に連呼する隼人にラルファが根負けをした格好で決まった。言うまでもなく、アルベセウスも隼人を擁護していた。
 こんなところで臨時の会議は終了し、話の肝であった討伐への出発は明後日となった。
 メンバーはナスターシャを筆頭に、隼人、『風』の副将軍であるレヴァイン・ノヴァ、その指揮下にある軍団を特別に編成した小隊、約一〇名。レヴァインと小隊は、あくまでもサポートという位置付けで、来るべき『喰人』との一戦はナスターシャと隼人の二人が受け持つ。『人間』如きがどうにか出来るレベルではないのだ。上位階位の『喰人』は。
 こうして隼人の長かった一日が終わるのだが、やや時間を戻し、場所も変えさせてもらおうか。

 時間は臨時に会議が開かれる二時間程前。
 場所は西の地。

 ずずぅん――という轟音が鳴り響き、尋常でない砂埃が吹き舞い上がる。
 ケイヒルは手に持った剣を横に払うように振り、刀身に付着した血を払い飛ばした。
 だが、その剣は血が取れたことによって、輝きを取り戻すことなく、逆に血特有のどす黒さが増していた。血錆だ。血錆の剣は、よく見ると刃はところどころ大小に欠け、到底剣の役割を果たしてくれそうにない。
「……とりあえず――」
 ケイヒルは肩に掛けた鞘を手に取り血錆の剣を収めると再び肩に掛け、小さな山とも言えるくらいの荒くささくれだった高い丘を、全くものともせず軽快に跳ねるように駆け上る。
 丘の上に立ったケイヒル。僅かに目元に掛かる隼人と似たような銀髪を、ふもとから吹き上げる風が靡かせた。
「……――弱いなぁ。実に弱い。ヴェルゼモーゼス、キミもそう思うだろ?」
「不完全な喰人など、所詮この程度だ。時間の無駄にしかならぬわ」
 激しく憤ったヴェルゼモーゼスの声がケイヒルの頭に響く。
 ケイヒルは苦笑う。
「そう言うなよ、ヴェルゼモーゼス。僕はそれなりに楽しめたんだけどな。それに、あながち無駄だったとは言えないだろ?」
「ふん、確かにな」
「『ロゼ』……来るみたいだね」
 ケイヒルはその場でしゃがむと、さっきまで自分がいた場所に視線を移した。
 そこには大地が無かった。あるのは『黒』。その『黒』は怪しく蠢き、徐々に徐々にと大地を喰らい『黒』の支配を広げていくのだが、活動の限界が近かったのか『黒』の侵食は鈍り始め、やがて停止した。これが『地食』と呼ばれる現象の内の一つだ。
 そして『地食』をゲートに、世界に現れる化け物――通称『喰人』。
 多手、多足、多頭、多角、多口、と様々な奇形生物の形(なり)をしたケイヒルの四、五倍はある巨大な怪物が『地食』周辺一帯、至る所に倒れていた。
 血にまみれた大地。嘔吐を催す程の強烈な血臭。普通の人間なら卒倒しそうな凄惨な現場に、ケイヒルは満悦な笑みを浮かべていた。
「きっと、こいつらと違ってものすごく強いんだろうね。どうだろう、勝てるかな? 僕自身、今まで結構な数を『喰らって』きたから、案外イケそうな気がしてるんだけど」
「いや、今回は様子を見るぞ」
「どうしてさ? ヴェルゼモーゼスともあろうものが、戦う前から逃げるのかい?」
 予想外の返答に、ケイヒルは驚いた。
「戯けが。誰が逃げると言ったか。口の利き方に気をつけろ」
「おっと、これは失礼したね」
「ふん……安心しろ。お前が戦うことに変わりはないわ」
「それじゃあ、どうして」
「出現する場所が場所だ」
「ああ……なんだ、そう言うことかい」
「何も無駄に入り乱れる必要などない。残った方とお前がやればいい」
「でも、ヴェルゼモーゼスはそれでいいのかい?」
「なにがだ?」
「『ロゼ』が生き残ったら、僕たちが目的にしてる『力』を失うってことじゃないのかい?」
「その時は『ロゼ』を喰らえばいいだけだ。『ロゼ』一人、それだけの力を秘めているからな」
「へぇ、そうなんだ。でも残念だな、それを聞くと尚更戦いたくなってきたよ、僕は。……それに」
 ケイヒルは立ち上がると南へと目を向けた。かなり日が傾き、遠くに広がる景色は暗く、よく見えない。だが、ケイヒルは感じていた。
「……そこには、僕を不快にさせたヤツも居るようだしね」
「どっちでもよかろう。残った方が、より優れた力を持ってるということだ」
「……まあね」
 短い言葉で、一旦会話を切ったケイヒルは視線を元に戻した。瞬間、大地が小刻みに震える。
「さっきので最後だと思ったんだけど、どうやらまだ残ってたみたいだね」
 向けた視線の先。
『地食』に侵された漆黒の大地が、五つ又矛の形に大きく歪に盛り上がる。上がる。上がる。上がる。それは、張られた膜を内側から強く押している。そんな感じに似ていた。当然、膜には強度がある。限界を超えれば……
 バチンと大きな音を立てて『黒』が弾けた。一カ所、二カ所、三カ所、四カ所、五カ所、六カ所と次々と。
 姿を現したのは太く屈強な腕。皮膚に浮かび上がる無数の血管は異常なまでにぼこぼこと忙しなくと脈打っていた。
『地食』を突き破って出た腕はフラフラと彷徨い、侵されていない大地の感触を見つけるや、手を掛け一気に飛び這い上がる。破れた『地食』はまるで黒い水飛沫のように豪快に飛び散った。
 大地に音を立てて姿を見せた三体の『喰人』。
 一体は頭から下腹部にかけて口が並ぶ、目無しの化け物。下品に涎を滴り落とす。
 一体は腕が四本生えた化け物。前と後頭部に大きな目が付き、眼球が異様に動きまくっていた。
 一体は足が蜘蛛のように生えた化け物。首に骨が通っていないのか、三六〇度不気味に動いていた。
 現れた喰人が早速、異変に気付いた。
「コレは一体、ドウいうこと、ダ?」
 おびただしい数の同胞の無惨な姿を目に捉えた喰人は瞬時に感付き、肌の色が戦闘色である紫に変わる。しかし喰人達は同時に恐怖も覚えていた。
「ダレだ……どこニ隠れてイル! 姿ヲ見せロ!」
 喰人達は必死になって辺りを見渡す。
「――別に隠れてなんかいないんだけどね」
 自分の背よりも高いところから聞こえた声に、喰人達は一斉に上を見た。
 丘の上に立つケイヒルの笑う姿を捉えた瞬間。蜘蛛足の喰人が絶叫を上げながら跳躍しケイヒルを襲う。単純に圧死を狙った攻撃だ。地響きと共に丘の頂上が粉砕されるが、既にそこにはケイヒルの姿はない。より上の空へと跳んで回避していた。
 しかし回避した先、ケイヒルの眼前には、読んでいた目無しの喰人が現れる。
「これはなかなか!」
 そう一言発したケイヒルに、縦一列に並んだ口から、赤い波動弾が一斉放射される。
 言った言葉とは裏腹に、ケイヒルの顔から笑みが消えることはない。咄嗟に体を丸めたケイヒル。その身が黒い『障気』を揺らめき纏ったところ、喰人の放ったレッドラインバーストが直撃する。大爆発。夕闇の空が一時煌々とした赤に染まる。
 じきに爆発も収まり夕闇が戻ってきた空から、喰人、そして波動弾を浴びたケイヒルが落ちてくる。ケイヒルは全くの無傷だった。ケイヒルは地上に降りるなり、服に付いた埃を払う。やはりその顔には笑みが浮かんでいた。
 轟音とともに砂が舞い上がる。後ろを一瞥したケイヒルは、また服に付いた砂埃を払った。ケイヒルの背後に蜘蛛足の喰人が降り立ったのだ。三体の喰人は上から睨むようにケイヒルを見るだけで動かない。どう行動すればいいのか分からないのだ。為す手立てが思い浮かばない。強者と弱者の構図が出来上がっていた。
「残念。攻め方は悪くなかったけど、攻撃力が不足してるから何をやっても無意味だよね。今のがもしロゼだったら僕死んでたんじゃないかな?」
 楽しそうに話すケイヒルは鞘を手に取り、剣を抜く。ケイヒルの纏っていた黒い『障気』が剣へと移る。
「マ、待て! き、貴様ハ一体何者ナノだ」蜘蛛足喰人が必死の形相で問う。
「僕かい?」振り向くケイヒル。握った血錆の剣が……黒銀の輝きを取り戻していた。
「そ、そうだ」畏怖を感じた喰人達は後退る。
「どうせ今から死ぬんだから聞いても意味ないよ?」
 刹那、ケイヒルの一撃が蜘蛛足喰人の胸に、鍔(ツバ)いっぱいまで深く突き刺さる。
 一瞬の出来事に、理解するのにコンマを要した蜘蛛足喰人は遅れて胸に目をやる。
「ほらね」
「キ、貴様ァ!」
「――ズィータ――」ケイヒルは呟いた。
 剣を握る手の甲。古の文字が綴り書かれた――『魔』の紋章が血色に輝くと、一瞬にして剣を握ったケイヒルごと蜘蛛足喰人の体を貫く。
 白目になった蜘蛛足喰人は頭から前のめりになるような格好で倒れた。
「ひイィっ!」
「お。オいッ! ドこに行ク!」
 惨劇を目の当たりにした? 目無しの喰人が逃げた。背中に聞こえる四手の喰人の声を無視して逃げる逃げる。ズン……ズンと大きな足音が響く。
 ケイヒルは身を捻り空中で回転すると、逃げる喰人の背中を目がけて剣を投げ、呟く。
「――ルド リッヒ ヴァリッチ――」
 ケイヒルの手元から離れた剣は爆発的な加速を見せると、黒光線となり、逃げる喰人の体を背中から貫通した。貫通した黒光線は鋭角に方向を変えケイヒルの元へと、これまたすごい速度で戻ってきたが、ケイヒルはそれを慣れた手つきで掴み取った。正確には剣の方から、差し出された手に収まった感じだ。
 咆哮のような断末魔の絶叫が響き渡る。止まぬ絶叫を背にしたケイヒルが四手の喰人へと視線を向ける。
「どうせ死ぬんだからさ、逃げずにかかってきなよ」
 四手の喰人はケイヒルの持つ剣に目がいった。
「そ、ソノ剣はなんダ」
「? この剣? さあ、僕にもよく分からないんだけど。聞く一説によると『神具』って呼ばれるものみたいだね。まあ、見たとおりすごい武器だとは思うよ」
 絶叫が止み、次に轟音が響き渡った。蜘蛛足の喰人は今絶命した。
「フ、ふん。結局はそンな武器ニ頼らナケれば貴様ハ弱いのだロ」
「何だって?」『弱い』という言葉に、敏感に反応したケイヒルの表情が一瞬陰る。
「何度だッテ言っテやろウ! 所詮貴様ハ作ラれた強さニ酔っテルだけダ! 我ワレは違う! 己ノ力のみで戦う勇敢な種族なのだ! 我は今ココで朽ちるだロウ。しかし! 直にあのオ方ガ降臨サれる! あのお方ガ! あノお方が! ワズワルド様が我ワレの仇をきっと取ってくレよう!」
「ワズワルド? もしかしてロゼのことかい?」
「ソうだ! ロゼだ! 貴様が如何なる武器ニ頼ろうガ、あれ如きの力など、ロゼの前でハ、ワズワルド様の前では貴様ナド取るに足らん存在なのダ!」
 長く熱の籠もった弁を聞き終わったケイヒルの肩が震える。愉快すぎた。
「……あれ如きだって? もしかして、お前はあれが僕の本気だと思ったのかい?」
「ど、ドういうことダ」
 限界を超えたケイヒルは高らかに笑った。
「ナ、何ガそんナに可笑しイ」
 そんな言葉を無視して笑うケイヒルの頭に妙案が一つ閃いた。
「……いいことを思いついたよ。確かめよう」
「確かめル? ……一体何ヲだ」
「お前が崇めるワズワルド様と『弱い』僕。どっちが強いのかをね。お前、知ってるんだろ? ワズワルド様の、それはそれは素晴らしい強さをさ」
「い、イヤ……そ、それは、チ、ちょっと待テ!」
「またつまらぬことを」ヴェルゼモーゼスが深く嘆息を吐いた。
「光栄に思いなよ? 僕が本当の力を見せるのは滅多にないんだからさ。まあ、でも『弱い』僕が見せる本気なんてたかがしれてると思うけどね」
 必要以上に『弱い』というフレーズを口にするケイヒル。表情には出さないが、結構むかついていた。なぜ自分より遥かに弱いヤツに『弱い』ヤツ呼ばわりされないとならんのか、と。ケイヒルは血錆の剣を横に構える。
「……馬鹿が。僕に舐めた口を利いたことを後悔するがいいさ! ――ユァ ルゥ ドゥ ヴィエンリッヒ デス ヴォーゲン――ヴェル ゼ モーゼス――」
『魔』の紋章が裂音上げて真紅に輝く。
 体から吹き上がる『障気』が黒柱となり天を貫いた。
 これから何が起こるのか。純粋に恐怖で震える喰人が見上げる中、ケイヒルを中心に立ち上る黒柱は、大地を覆うように半球形に開いていく。少しずつ徐々に緩やかに。空ごと、広大な大地を飲み込まんと広がる『黒』。
 ケイヒルの作り出す『夜界』が徐々に、徐々に、徐々に、徐々に、徐々に、徐々に……出来上がった。
『夜界』に飲まれたケイヒルに喰人。喰人は今頃になって逃げ出す。絶対にろくな死に方をしない。朽ちる覚悟は冷めていた。
 逃げる喰人を見向きもしないケイヒルは冷たく口にする……解放の言葉を、死の宣告を。

 ――リーズ レベクター マイン リッヒ――ツヴェルディフ デス ヴァルキューレ――

『夜界』の外、本物の夜空の元に喰人の絶叫が響き渡った――悪魔、と。
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